朝、出勤したら店長が言う。猫がいるんだよ、と。
猫がいるのは外だったが、店長が店頭に商品を出しているとしきりにカゴに入ってこようとしたり店内に入ろうとしたり。困った様子なのだ。
外を見る。ああ、いた。アメショーの血が入ってると思われる猫ちゃん。子猫というにはちょっと大きいが、まだ子供だ。
人間に慣れているらしく、さっそくこちらに寄ってくる。そして店内へ。おいおいと思って追うが、かわいいのでちょっと泳がせて遊ぼう…とか思ったら一目散に調剤室に突入。慌てて連れ戻す。それにしてもかわいい。うちがマンションでなければ、嫁が猫好きの猫アレルギーでなければ連れて帰りたいくらいだ。
とにかく外に出して入り口を閉める。当面はこれでいいが、開店したら開けっ放しだから間違いなく入ってくるだろう。
開店。客が入ってくる。猫は外で待っている。客の波が激しくなる。猫は…入り口の端に座っている。かわいい。
ちょっと目を離した隙にその姿が消えた。客の波が過ぎた頃に店内と外を見回すが、見当たらない。構ってもらえなくて去ったのかな。混乱しなくて助かったが、どこか寂しい。そのまま2時間くらい過ぎた。
昼休みから戻ると、店長がある方向を指差す。店内の棚の下のスペースだ。そこにいるはずだ、と。
見に行くと、カゴの中ですやすやと眠っている。いかにも猫らしい顔で熟睡している。こりゃいいところを見つけたな、と。布で隠してある場所だから、覗き込まない限り見つからない。そのままそこで寝ていておくれ。
数時間が経過。突然、にゃーという声。ビックリして見回すと、俺より早く反応した店長が調剤の待ち合いにいると発言。確認に行くと、カウンターの横の隙間にいた。俺の足に擦り寄ってくる。腹が減ったのだろうか。
この時になると俺も店長も情が移ってしまっており、外には出せない、出したところで戻ってくるのがオチだ。どうする?ちょっと考えて、休憩室で食事を与える事にした。あ〜あ、メシなんてあげたらそれこそ居着いちゃうぞ。
店長が休憩に入る。しばらくして、休憩室のドアの小窓から中をのぞいてみる。子猫と戯れる店長。楽しそうだ。こりゃもうダメだな。
店長の休憩が終わり、猫ちゃんは休憩室においてドアを閉める。カラーボックスの中で寝てるらしい。どうするか、と協議したところ、結局店長が連れて帰る事になった。自宅で預かって、実家に行ける時に実家に預けるらしい。実家にはもう犬3頭と猫が1頭いるそうだ。それなら大丈夫か。
しょーがねぇなぁ…そう言いながら店長の口元は緩んでいる。内心嬉しいのだろう。実家に持って行くとか言っていながら、数日暮らしたら手放せなくなってるんだろうなぁ。
俺としては店で飼いたかったんだよね。タバコ屋の猫みたいな感じで。でも薬局という業態から考えると動物を店内に常駐させるわけにはいかない。不可能だ。ペットの連れ込みも原則お断りしてるくらいだしな。
しかし猫がいるだけで空気が和むのよ。本当に。今日は誰も怒ってなかったもん。
人間にとってペットって、こんなにも重要な存在だったのね。改めて気づかされたよ。
来年こそは陸ガメを飼おうと思います。亀が家にいたら和むよね、きっと。