大ちゃんは薬剤師だ。調剤薬局勤務の薬剤師だ。今日も色んな患者さんがやってくる。
風邪だインフルエンザだ捻挫だニキビだアトピーだヤケドだガンだ胃潰瘍だリウマチだ神経症だ不眠だ分裂病だ喘息だアル中だ禁煙したいだ糖尿だ…
いつもは何も考えない、気にしない。自分が重度の頭痛持ちで毎日鎮痛剤飲みながら仕事してるせいもあるのかもしれないが、「ル○でもパブ○ンでも飲めよ!」とか「ビフ○イトでいいだろ!」とか「こんなもん使うようじゃ禁煙なんてできねぇよ!」とか、この程度の悪態をつくくらいです。
でもね、昨日はちがった。理由はわからないけど、いつもは考えないようなことを考えた。
オイグルコン、成分名グリペンクラミド。糖尿病の薬だ。かなり広く使われている。そいつを14錠用意している時のこと。
「今、俺がこの薬を飲んだらどうなるだろう?」
結果は低血糖起こしてバタン、だろう。そんな薬を何のためらいも迷いもなく処方せん通りに用意して患者に渡してる俺。普段は絶対に考えない「俺は言うべきことを全て言っているか?低血糖なんか起こさないように適切にアドバイスしているか?」なんてこと。
多分、いつも言うべきことは言っている。それでも低血糖は起きている。それでも患者さんたちから文句を言われたことがないのは、俺が低血糖について触れてきたからであろう、しかしだ。
死んじゃったらどうする?
可能性はある。言うべきことを言っていて、するべきことをしていれば、それは「事故」であり俺は罪には問われないだろう(もっとも、証明する必要は出てくるだろうが)。
薬剤師であれば「何か」が起きた時に当事者になる。罪になろうがなるまいが、その「事故」に巻き込まれる。これはもう避けられないし仕方ない。でもコレは怖いことだと思う。俺が毎日毎日毎日毎日何気なく手にしているこの薬たち。オイグルコンに限らず、人を殺してしまうよな可能性のある薬はいくらでもある。これはやっぱり怖い仕事だと思うんだ。
俺だって人間だ。実際に何回か調剤ミスをしたこともある。幸い健康被害は出なかったが、文字通り「身が凍り付く思い」をしたことがある。それ以来、俺の調剤は周りとは一線を画すほど慎重なものになった。
それでもミスは起きる。絶対にゼロにはならない。
前述のように、いつもはこんなこと絶対に考えない。他人のミスを見て「気を付けろよな〜」とか思う程度だ。
インフルエンザの嵐も去りつつあり、少しヒマになってきて疲れが出てきたのかもしれない。疲れて、自信が持てなくなっているのかもしれない。それでも俺は毎日調剤をして患者に薬を渡す。
あなたは、間違いは起きていないと言い切れますか?
神経質なくらい副作用を気にするお母さんも困るが、何も気にせず言われた通りに飲むだけのオヤジはもっと困る。人の話をロクに聞いてもいないくせに、そういう奴に限って何かあると文句を言ってくるのだ。
薬剤師になった自分を誇れる時は確かにあるが、今はこんな職業に就いた自分を呪うしかない。
みなさん、自分が飲んでいる薬やこれから飲む薬についてはよく知っておきましょうね。薬を受け取る時に、しっかり確認して下さいね。飲むのは自分なんですからね。